60オッさんのタイ〜ラオス 1人旅 その48
さて、あの来た道を帰ろう。ペダルを踏む。
しばらく行くと集会所みたいな所から民族音楽が聴こえてくる。
通り過がりに見ると若者が演奏していた。
その音楽を耳に、凸凹道、水溜りの悪戦苦闘の始まり始まり。
でも、慣れてくると結構気持ちいい。
こう走ると上手くいくぞ。
だから、こっちをこう攻めようと・・・先を読み乍らのドライビングテクニック。
バシャーと水を弾くのも1つの方法だと、夢中になってくる。
時折、やってくるソンテウの観光客とは互いに笑顔で手を振り挨拶。
さっきまでのこと、これから先のこと、何もかも忘れてただ手を大きく振る。
それだけ。
そんなとき、フト浮かぶ。
『こんなことしてていいんだろうか・・・?』
おいおい、そんなことは考えるな!今回は了解済みだ。
ここで思い存分楽しむんだよ、おい、君!
こんな気分が味わえるなんて最高やんか!!!
石造りの橋を渡ったとき、
前方から、昨日、パクセーから一緒に来た外国の男女の仲間たちと出会う。
AYさんは今までの経過を話し、
彼らは、「これで、いいんだ」と納得し、
私たちが来た道を駆けていく。
「バーイ!」
英語、喋られるってことは、なんていい事だ。100万回の戒め。
渡り切ると、朝、来た道と違う、畑の中をまっすぐ伸びる凸凹道を行く。
『この道が島の反対側をぐるりと廻る道なんだ』
と日陰のまったくない道をエッチらコッチラ、自転車のペダルを漕ぐ。
(後で判るんだが、AYさんは行き、この道を使ったようだ)
すれ違う島の人々。
道を塞ぐ牛の群れ。
ソンテウから手を振る外国の人たち。
私たちをパワフルに追い越していくレンタサイクル仲間の西洋人。
『いい気持ちだ』
私はTシャツを脱ぎ、少しでも逞しく見えるように、貧弱な上半身を太陽に晒した。
そんな事をしている間に、
AYさんは軽快にドンドン前を進んで行く。小気味よく。
慌ててペダルを踏むが、
『ツライ!ンッ・・・!』
体力、衰えたか・・・、脚力がない。
重いペダルを踏む。
私は、鈍った身体にムチを打つ。
彼女の姿は50m先。
『強いやん!負けとれんわい!』
と漕ぐが、60歳という数字が身に沁みる。
キーコ、キーコ、キーコ・・・行き着く先、この道は、
なんと泊まってる”Mr Tho's Bungalows"の手前、2差路のもう一方の道だったんだ。
「あぁ、ここに来るんや!泊まってる所やん。オーイ、ちょっと、来えへん」
宿とは反対、フェリー船着場の方へルンルンと走る彼女を呼び止めた。
部屋を見せ、
「安い所やけど、結構いい所やろ」
年甲斐もなくええ気分で案内。
関心するAYさん。
「・・・」
『さて、これで終わりかな。ほんじゃ・・・』
と思っていたら、
「この先は?」
私が朝一番に走って行った、
フェリー船着場方向とは反対側の”Mr Tho's Bungalows"の前の道を聞いた。
「あの橋まで行くよ」
「行こうか」
すでにペダルを踏む彼女。
『あぁ、行くんだ・・・』
と疲れ気味の私。
今朝、走ったばかりの道を追って行く。
彼女は珍しそうに風景を楽しみ進んで行く。
先ほどの畑の中の凸凹道じゃなくて、こっちはメコン川に沿って島の生活者の佇まいがあるし、観光客相手のカフェもあったりするから、いろいろ目が奪われる。
ポッと浮かんだ、旅での”付き合い”。
『そうだよな。一人じゃなく二人だと、こういうこともあるんだよな』
一人、二人、旅についてアレコレ考えを張り巡らせる。
石造りの橋のたもとに到着。
あるべき所に上手い具合にある店で水を買い、一休み。
「私、2ℓじゃ、足りないの」とAYさん、ゴクリ。
「なんでか、その〜、私は喉、そう乾かんのや」とゴクリ。
その前を通り過ぎるソンテウの客が「ハーイ!」
こっちも「ハーイ!」
島の人たちより観光客との出会いがなんと多いことか。